2010年5月16日日曜日
『グリーン・ゾーン』
映像がブレていたという評者がいらっしゃいましたが、ハンドカメラで臨場感を狙っているのだから、ブレるのがあたりまえでしょう(笑)。
しかし、本作は決して「ドキュメンタリー」ではない。「ドキュメンタリー」とは、まったく異なったスタンスで作られている。伝えたいのは、なんらかの「メッセージ」ではない。「結果」が出てから作っても……などという評者もおられましたが(笑)、本作は、べつに、イラクの潔白を描こうとしたのでも、アメリカの悪巧みを描こうとしたのでもない。ただ、「戦場」を、21世紀の戦場を描こうした映画である。
なんだ、戦争を描いて楽しむのか、けしからん。という意見は間違っている。そういうことを言い出したら、殺人を、レイプを、民族浄化を、エンターテインメント映画として描いたものはすべて「けしからん」ことになる。倫理的に正しい題材だけを選んでいたら、映画はべつの何かになってしまうだろう。
そもそもの誤解は、エンターテインメントとはなにかということにある。それは、べつに、「あはは、あはは」と笑って観るものという意味ではない。
フィクションとして人の想像力に訴えるものは、すべてエンターテインメントであり、その作品に対して、お金を払ってもよいと考えられる価値のあるものがエンターテインメントである。
監督のポール・グリーングラスは、エンターテインメントの内実を、そのようにレベルアップした。彼の意図をよく理解して肉体化したマット・デイモンもしかり。
本作は、もはや、旧式のアタマでは理解できない新しいエンターテインメントでもある。ほんもののイラク戦争帰還兵を90%起用した作りにも、それは現れている。
さらに言うなら、そういうエンターテインメントでありながら、人の良心をテーマとして問う哲学にもなっている。
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