『日本近代史』(坂野 潤治著、ちくま新書、2012年3月刊)
2.26事件を扱った、久世光彦の『陛下』という小説を読んで、実際のところはどうなんだろう? と、やはり、買ってあった、本書を紐解いた。著者は資料を丹念に読み、分析を重ねるという手法で、「歴史を記述」していく。そう、歴史とは、なによりも「歴史家の記述」なのだ。
昨今ともすれば、太平洋戦争が、「避けられなかった太平洋における覇権争い」だなどと、まるで、歴史をゲームのように見るような態度が当然のようになっているが、本書を読めば、ひとつひとつのできごとに、作られたドラマではない、人間の思惑が非常な複雑さで絡み合っているのがわかる。本書に比べ、教科書の歴史は、あまりに大雑把すぎるし、正確さも欠いている。
政治家の「国際感覚の欠如」うんぬんが言われる昨今であるが、どうも、「国際感覚」よりも、もっと自国の近代史について精細に謙虚に学ぶべきであろう。
なお、本書は、冒頭の明治維新へと至る時代から読んでいくと、あまりに入り組みすぎて、昭和に至るまでには息切れしてしまうかもしれない。オススメの読み方としては、最終章から逆に遡るかたちで読むと頭に入りやすい。あるいは、関心のある時代、事件から入っていく──。
ひとつ難点を言えば、たとえば、本書を読んで、まるで「戦前」が、国会議員には、憲法(「明治憲法」である)で、言論の自由が保証されているからと言って、一般人民にもそれが許されていると思ったら大間違いである。本書には記述がないが、2.26事件に関連して、事件になんら関与していなかったにもかかわらず、思想的に「そそのかした」ということで、北一輝が、民間人にもかかわらず、軍法会議にかけられ、弁護人抜き、抗告抜きで、数日後に、銃殺刑に処せられているという実態もある。本書には、そうした「批判的記述」はない。
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