エンターテインメントのアメリカ映画を見ていれば、アメリカ人がいかにセックスを人生の重大事にしているかがわかる。いい年のオバサンまでが、夫が自分を女として見てくれないと悩む(メリル・ストリープ主演『31年目の夫婦げんか』)。しかし、ソダーバーグはそういう風潮とは無関係だ。ただ彼は現代社会を生きる「生」の複雑さを見つめる。本作では、精神安定剤のアメリカでのカジュアルな流通(テレビでCMをやっている)と、それを逆手にとった「嘘」を、美術的に配慮された画面(本作を最後に、彼は画家としてのキャリアに挑戦するという)で見せる。配役はあくまで、「リアル」にこだわる。ジュード・ロウ、ルーニー・マーラ、チャニング・テイタム、キャサリン・ゼタ・ジョーンズの演じる主要人物が、俳優たちの実年齢とほぼ同じに設定されていると見た。
ソダーバーグは、映画監督としての最終作で、テーマ的にはデビュー作に戻ったように感じた。そこにはすがすがしい「初心」があり、それは題材のスキャンダラスな外観を裏切って、ストイックな美しさを湛えている。

